体外受精
通常、排卵された卵子は卵管で精子と出会い、受精して分割を繰り返しながら子宮へ着床します。この過程のどこかに問題がある場合には、自然妊娠することは困難です。
体外受精-胚移植法とは、この一連の過程のうち受精から胚の発育までを最新技術を用いてサポートし、妊娠を成立させる治療法です。一般不妊治療では結果が得られなかった難治性の不妊症に対して、非常に有効な方法です。
精子本来の力により受精を行う一般体外受精では、精子をより良い状態に整える必要があります。当院では、WHOが定める正常精液の基準よりもさらに厳しい基準を一般体外受精を行うことができる基準として設定し、少しでも妊娠成立に近づけるよう、独自のシステムで対応しています。
■ 体外受精-胚移植法の流れ
複数の卵胞を発育させて、超音波を見ながらこれらの卵胞から卵子を採取します(採卵)。採取した卵子を精子と一緒に培養して体外で受精(媒精)させ、さらに数日間培養した後、1個の受精卵(胚)を子宮へ戻します(胚移植)。
■ 体外受精が成功する条件
1.培養液に関して
培養液は卵の成長を支える最も重要な要素です。メーカーの違いや、同メーカーであったとしても、ロットの違いでその内容は完全には同じものではないことがあります。当クリニックでは選りすぐった培養液を使用し、同ロットであっても、状態を常に検査・監視し、できるだけ成績のよいものを選択後使用します。また、胚移植の反復不成功症例には、着床を助けると言われているヒアルロン酸を多く含んだ培養液を使用することもあります。患者様の状態を常に検討し、それに応じた培養環境を提供することを目指しています。
2. 卵子に異常がなく、赤ちゃんになる能力がある受精卵(胚)ができる
3.着床環境に問題がない
以上の点を慎重に検討し、条件を満たしていかない限り、妊娠は達成されません。
結果が得られない場合には上記のどれが満たされていないのか、再度検証をします。
上記2・3における当院の具体的な検証および対策に関して
2.卵子に異常がなく、赤ちゃんに能力がある受精卵(胚)への追求に関して
当院では、同じ胚細胞でも、タイムラプスモニタリングによる異常分割などの点からのレトロスペクティブな解析や独自の検査により真の良好胚の選択に専念しております。
これにより、BBなどの一見良好胚の場合でも、移植には不向きであると判断する場合もございます。この吟味を行うことで、流産率の低下と妊娠率および生産率の向上に努めております。
是非、ご体験ください。
3.着床環境に対する追求に関して
3回の良好胚盤胞と考えられる移植を行っても着床反応を認めない反復着床障害の方に対しては、内膜日付診、スクラッチング、ERA(Endometrial Receptivity Analysis)、免疫抑制剤による免疫環境(Th1/Th2 ratio)の改善治療、2段階胚移植などを駆使して、最高の着床環境の追求をします。これにより、他院での反復着床障害の方の50%以上の方が着床をしております。是非、ご相談ください。
■ 副作用について
体外受精で使われる薬による副作用について
体外受精では採卵のため、卵胞を育てて排卵を促すために排卵誘発剤という薬が治療で用いられることがあります。
排卵誘発剤は種類も豊富で、効き目の程度にも違いがありますが、人によっては、吐き気や頭痛、少量の出血なども起こる可能性があると言われています。
他の副作用としては、卵巣が腫れて腹水が溜まる卵胞過剰刺激症候群や多胎妊娠などが挙げられます。
体外受精も自然妊娠同様、多胎妊娠が生じることもあります。主に複数の受精卵を胚移植することで起こりうるとされています。それゆえ、多胎妊娠のリスクを下げるために、1回の胚移植で1個の胚を移植することが大事だと言われています。
採卵に伴う合併症について
腹腔内出血、性器出血、感染などが一時的に起きる場合があります。
万一の場合にはごくごく少数ではありますが、入院のもと管理する場合もございます。
■ 顕微授精法
極端に精液所見が悪い場合(精子数・運動性)や、体外受精では受精しなかった場合に、精子を直接、卵子の細胞質へ注入して受精させる卵細胞質内精子注入法(ICSI)を行います。 当院での顕微授精での受精率は約80%です。これを達成するために当院の顕微授精は洗練された機器、培養士のみで行われ、日本トップレベルの妊娠成績を約束します。また、通常の顕微授精ではどうしてもうまくいかない場合には、音波を用いた顕微授精であるPIEZO-ICSI法や卵子を活性化させ受精を促すと言われているカルシウムイオノフォアという薬剤やイオノマイシン処理を行い、幅広い高度な専門知識を駆使して受精を促します。
■ 受精卵の凍結、凍結胚盤胞融解移植法
胚移植数は原則1個までですので、それ以上の良質胚ができた場合、ご希望があれば凍結保存します。
当クリニックでは、超急速ガラス化法(Vitrification法)を用いて凍結をしています。この方法は世界に先駆けて広島HARTクリニックが開発した方法です。その結果、妊娠率は従来の胚盤胞凍結法と比べて飛躍的に向上しました。凍結後、融解した際の胚の生存率は99%以上です。
■ 反復不成功時の対応
何度か治療を試みているにも関わらず、妊娠に至らないケースは少なくありません。
当クリニックでは、「難治性着床不全・不育症専門外来」を設置し、様々なケースの患者さんのお手伝いをしております。