第38回日本受精着床学会学術講演会の口演発表の中から

第38回日本受精着床学会学術講演会の口演発表の中から

神奈川ARTクリニック 理事長・院長 田島 敏秀

本学会は、COVID-19感染予防の観点から、2020年10月にWEB方式で行われ、当院からは「調節卵巣刺激における排卵抑制に経口GnRHアンタゴニスト製剤レルミナ錠を隔日投与用した場合の臨床成績」というテーマで発表いたしました。以下、要約します。

体外受精プログラムにおける調節卵巣刺激においては、排卵しないように、いかに多くの良質な卵子を獲得できるかが、採卵周期あたりの生産率を上昇させるためにはとても大切となります。排卵誘発法として、現在は、様々な観点から、GnRHアンタゴニスト法が世界の主流となっているのは周知の事実でありますが、従来法では、ガニレスト皮下注0.25mg (以下、ガニレスト)が使用されてきましたが、疼痛を伴い、費用面においても、患者さんの負担は少ないとはいえませんでした。2019年、レルゴリクスを有効成分とする経口GnRHアンタゴニスト製剤、レルミナ錠40mg(以下、レルミナ)が子宮筋腫に対する治療目的で世界に先駆けて日本で開発され、保険収載されました。レルミナ錠が、排卵誘発の際の排卵抑制に利用できないかという疑問に答えるために、本研究では、調節卵巣刺激にレルミナを隔日投与し、ガニレストによる従来法と臨床成績を後方視的に比較しました。2019年10月から2020年2月の期間で、GnRHアンタゴニスト法にレルミナを用いた75周期をレルミナ群とし、2018年1月から2019年9月にガニレストを用いた387周期をガニレスト群とし、両群ともに月経周期3日目よりGn製剤を連日投与し、主席卵胞径が14mmに達した時点で、GnRHアンタゴニスト製剤として、ガニレスト群では、ガニレストを連日投与し、レルミナ群においては隔日経口投与しました。排卵誘起にはhCG製剤を用い、36時間後に採卵し、Day7まで胚培養し、ガラス化法により胚盤胞のステージで全胚凍結しました。後続する周期に融解胚移植を行い、妊娠成績を比較しました。レルミナ群とガニレスト群の平均年齢は38.5±4.7歳、38.4±4.5歳、Gn総投与量、排卵誘起時のホルモン値E2、P4に有意差は認めませんが、LH値はレルミナ群で1.8±2.0と有意に低く、両群ともに早発排卵は認めませんでした。採卵率、成熟率、受精率、胚盤胞到達率に関しても有意差は認めませんでした。レルミナ群に22周期、ガニレスト群に378周期の融解胚移植を行い、臨床妊娠率(54.5% vs.52.1%)、流産率(8.3% vs.20.8%)、継続妊娠率(50.0% vs.41.0%)は両群で変わりませんでした。以上の結果から、レルミナの隔日投与法は、従来法であるガニレスト法と比較しても、臨床成績に有意差はなく、患者の利便性の観点から有用であると結論づけました。今後、レルミナが体外受精プログラムにおける調節卵巣刺激に活躍することが期待されます。